「できない」
「いや、できる」
「高嶋だけ」
ぎゅっと裾を掴む力が強まっている。
こんなことされて、平常心でいられるほうが難しい。
何度も落ち着けと心の中で唱える。
「高嶋」
「その手離せ」
「絶対に嫌」
離せと言えば子供のように拒否される。
結局その手は車の停めてあるパーキングエリアに着くまで離されることはなかった。
「ああ…俺の美雪が他の男に取られるなんて…」
運転座席に座ったのはもちろん氷野の兄で、俺と氷野は後部座席に乗り込んだ。
だが車は発信することなく、ハンドルに手を置いてうなだれている彼女の兄。



