「なんで俺が…クソ、俺の美雪…」
前を歩く氷野の兄がブツブツ文句を言う中、突然シャツの裾に違和感を覚えた。
何かに引かれるような、そんな感じ。
思わず確認すれば、氷野がその部分をつかんでいた。
「……氷野」
静かに名前を呼べば、氷野の肩がビクッと跳ねた。
かと思えば、人差し指を自分の唇に当てる動作をした。
まるで『静かに』とでも言いたげだ。
確かに騒いでしまい、もし彼女の兄に見られてしまえば何を言われるのかわからない。
まさか氷野がこのような行動に出るとは。
無理矢理振り払うことはできないため、彼女は満足そうである。
「今日、黒河さんと仲良くなれたの」
「……らしいな」
「黒河さんも良い人」
「氷野が自分晒け出せば人集まると思うぞ」
今はみんな恐れているだけなのだから。
それを氷野はわかっていない。



