とはいえ居残りとなれば嫌な予感しかしないのだが。
「……遅い」
教室に誰もいなくなってどのくらい経っただろうか。
時計の針は4時を過ぎようとしていた。
一向に俺を居残りと命じた先生が来る気配はない。
もしかしたら本当に氷野が騙したのかと考えそうになる。
が、氷野に限ってそれはないと思い待つことにした。
なんとなく窓の外に視線を向ければ、グラウンドで野球部の練習が始まろうとしていた。
「はぁ…」
またため息。
今日1日で何度ため息を吐いただろうか。
いい加減、良晴の言う通り新たな恋を探してみるか?
まだ吹っ切れていないくせに新たな恋に走る、というのは逃げているような気がしてならない。
結局今の気持ちをどうすることもできず、時計の長針が数字の1へと到達したその時。
「───高嶋」
どきりとした。
一瞬、心臓が止まるかと本気で思った。



