「氷野、どうしたんだ?」
この中で氷野とまともに話せるのはおそらく俺のみ。
さっきまで甘ったるい声を出していた女も氷野を警戒し、怯えていた。
「高嶋は教室に残れって先生からの伝言」
「は?」
「それだけ」
「あっ、おい待て…」
もう一度冷たく睨みつけてきたかと思うと、鞄を手に持ち教室を後にしてしまう氷野。
いや先生って誰だよ。
担任か?それとも教科の先生か?
説明不足の彼女には呆れた。
だが好都合でもある、カラオケを断るいい理由だ。
「怖いねぇ、氷野さん。
絡まれちゃった高嶋くんが可哀想」
いや、特に俺は何もされていない。
それなのに可哀想だと決めつけるのはおかしいだろう。



