「感情を表に出すの苦手なんだな。
今はコロコロ変わるくせに」
「…うん、だって高嶋といると心がおかしくなる」
どれだけ俺のことが好きなんだ。
そこまで好いたところで、氷野自身いいことは何ひとつないというのに。
「あのなぁ、俺は氷野の気持ちには…」
「わかってる。
でも諦められないの」
首を何度も横に振る彼女。
どうやら諦める気はないようだ。
「だからこれも学校につけてく。
高嶋の前では素直になる」
「…っ、それは俺が困るんだけど」
「嫌だ、ねぇもうフィギュアはいいの?」
この話を避けたいのだろう、無理矢理話題を変えられてしまう。
「いや、別に興味ねぇから」
「えっ…」
「次行くぞ。
腹減ったし何か食べに行くか」
“何か”と言いつつも、女と行くようなオシャレな店ではない。



