「どうして?高嶋が欲しいやつ、私も取る」
「は?」
「取ったらあげるね」
「……っ、あーもう!わかったから!」
氷野の心の綺麗さに耐えきれなくなった俺は、それを取ろうとするのを諦めた。
「えっ…高嶋?」
「氷野が欲しいのやろう、気になるやつとかねぇのか?」
「でも高嶋はこれ…」
「そんなのまったくいらねぇ、興味すらねぇから」
「えっ…え?」
明らかに困惑している氷野を無視して、ぬいぐるみのコーナーへと移動した。
「で?気になるやつとかあるのか」
「いや、私なんかより高嶋…」
「ねぇなら帰るぞ」
「あっ、ま、待って…それは嫌」
ゲームセンターを後にしようとする俺のシャツの裾をつかみ、引き止めた彼女。
ゆっくりと振り向けば、氷野は少し照れくさそうに口を開いた。



