人は、自分の好きなものを殺人に利用することはない。駿河雅彦が殺害することなどできないのだ。では、なぜシャーロック・ホームズのトリックが使われたのか?それは、彼に罪をなすり付けたい人物がいるからだ。

「……ハハッ!!敵わないなぁ」

遼河は高笑いをし、京を見つめる。その目には何かに対する怒りや悲しみ、嬉しさなどが混じり合っていた。

「あなたの言った通り、俺の本当の名前は岡冬人。俺の兄を殺したあの四人に復讐するために……」

「復讐?」

「兄は、劇団の人気俳優で数々の舞台に立っていた。そんな兄の舞台を何度も見たことがある。別世界に迷い込んだみたいで、誰もが一瞬にして魅了された。そんな舞台を、これからも見れると思っていた」

岡夏輝は死ぬ間際、冬人にラインを送っていたそうだ。あの四人に妬まれ、次の舞台に必要だったセットを壊した罪を着せられ、自宅謹慎になってしまったこと、みんなから信用してもらえずもう舞台には立てないということ、死ぬしかないということを……。