「う……」

「緋色の研究では、被害者は二人いる。一人は空き家に連れ込まれて毒殺された。もう一人は、ホテルで刺殺された。でもその被害者を殺した毒は、トリカブトではなくアルカロイドよ。そして、現場にあったメッセージはインクで書かれたものではなく犯人の血で書かれたわ」

淡々とした京の言葉に、末良刑事の表情は固くなっていく。先ほどまでの自信はどこにもない。その様子を、遼河が冷たい目で見ていた。

「す、全て物語の通りに進めることができるわけじゃないだろう!とにかく、こっちは今一人の人間をマークしているんだ」

「どなたをマークしているんですか?」

遼河が興味深々と言った目で訊ねる。末良刑事は「この男だよ」と一枚の写真を見せた。そこに映っていたのは、駿河雅彦だ。

「駿河と殺された二人は昔、ある劇団に所属していた。そこで何度か揉めているのを劇団の人間が目撃している。そのことを根に持って殺したんじゃないか?奴はシャーロック・ホームズのファンだしな」