「実は……」

末良刑事の言ったことに、京は目を見開いた。



昼食を急いで食べ、京と遼河は事件現場へと向かう。末良刑事からの電話は、「また殺人事件があった」というものだった。

レストランから二十分ほどしか離れていない住宅街。紫陽花が植えられたその一軒の家の前には、パトカーが何台も止まり、何事かと野次馬が集まっていた。

「先生、こっちだ」

末良刑事が手招きをし、京と遼河は野次馬をかき分けて黄色のテープをくぐる。

「亡くなったのは、森山礼司(もりやまれいじ)。会う約束をした友人が家に来たところ、リビングで亡くなっていたそうだ」

末良刑事の後ろに続き、京と遼河はリビングに入る。そこには男性の遺体が転がっていた。相当苦しんだようで、その表情から京は思わず顔をそらしてしまう。遼河は無表情で遺体を見つめていた。

「死因は?」

京の質問に、「死因は解剖をしないとわからない。しかし、おそらくワインに毒が入っていたんだろう」と末良刑事はあごに手を当てながら言う。