「何沈んでんの?司紀」

「聞いてよ〜紗千香(さちか)〜!!」



私は放課後、親友の中野(なかの)紗千香に一時間目の事を話した。すると紗千香は「うわぁ……」と引きつった声を出した。



「やっちゃったね司紀……」

「そうなんだよ……これから先、桃ちゃんの顔見れない……」

「まーまー、落ち着いて。帰りにハンバーガー食べて帰ろうよ」

「うん……」



私と紗千香が靴箱に向かっていると、



「あ、いたいた。相原」

「っ!」

「そんな驚くなよ」



今一番会いたくない人に声をかけられてしまった。恐る恐る振り返ると、やはり、そこには桃ちゃんかいた。いつもなら呼ばれただけで嬉しいけど、今は嬉しくない。



「ちょっと話がある。来い」



桃ちゃんはそう言うと、歩いていく。
私は紗千香に手を振った。



「紗千香〜、私死ぬのかな……」

「死なない死なない。早く行ってきなって」

「はぁ〜い……」



私は急いで先生の後をついて行った。
先生は廊下の角で立ち止まると、ポケットから、紙切れを出した。紙を広げられて、私は固まった。なんと、小テストだった。名前の記入欄には堂々と『桃山司紀』と書かれている。一気に顔に熱が集中した。



「これ、何?」

「……ぁ…ぅ……ぇえっと……」



私は言葉に詰まる。
ど、どうやって誤魔化せば……!?い、いや、誤魔化してもこれは誤魔化しきれない……!!私は意を決し、こう言った。



「す、す……好きだからです!先生の事が!!」

「………ん??」



先生は予想外だったのか、狐につままれたような顔をした。私は勢いに任せて言いたい事を全部言う事にした。



「せ、先生と結婚する事とか妄想して……!そ、それで苗字だけでもって……!す、すみません!でも、好きだったから……」



うわぁあぁあ……!恥ずかしくて死にそう……!!ドキドキと心臓の高鳴る音が聞こえ、顔が熱い。数十秒の沈黙の後、先生がようやく口を開いた。



「……で?」

「……え?」

「相原はさ、どうしたいの?」

「……え、あ……」

「『好き』って事だけ伝えて……その後は?俺と、付き合いたいの?」

「あ……ぅ……はい……!」



「そっか。じゃ、付き合おうか」

「へっ!?」




嘘ッ!!本当に!?