「実は、一花ちゃんにお願いしたいことがあるんだけど…」

「え?」


予想外のその言葉で、私は下を向いていた顔を上げる。


「お願いです!! 勉強を教えて下さい!!」

「ええっ!?」


顔の前で両手を合わせ、深々と頭を下げてくる月形く…じゃなくて、秋くん。


「何この急展開っ!?」


私なんて、勉強全然できないから……!!


「ちょっと一花、本音と建て前が逆になってるから!!」

「はっ!!」


後ろにいたすみれが、こそっと声をかけてきてくれたおかげで我に返る。


こほんと軽く咳払いをして、頑張って口角を上げてみた。


「わ、わ、私なんて、勉強、ぜ、全然できないから…!」


慌てて、建前を口にする。

自分でも、この笑顔が引きつっていることがわかる。

しかし秋くんは、全く気にした素振りなんて見せずに続けた。