「あーでも、いきなり名前呼びってあんまり嫌だ?」
頭を軽く掻いて、申し訳なさそうに私を見てくる。
ずるい。
その顔、絶対女子受けがいいことわかってやってるんでしょ。
「……いや、大丈夫…です」
「本当?じゃあ改めてよろしくね、一花ちゃん!!俺のことはぜんぜん秋でいいから!」
「……あ、き……くん」
「うん!呼んでくれてありがとう!」
……やばい。
これはなかなか恥ずかしいし、いきなりこんな、名前呼ぶとか、ちょっと、その……。
きゃ、キャパシティーが……オーバーするんですけど…っ!!
かああっと顔が熱くなって赤くなっていくのを隠したい。
いつもならこうして下を向けば、長い前髪が守ってくれていた。
でももう、その前髪も役目を果たせないくらい、短くしてしまった。
頼りのメガネも、この状況で鞄から取り出せるほどの余裕なんてない。
やっぱり私は、この人を見返すなんて事……無理なんだ……。



