「あ、ちょっと、ちょっと!!」
「?」
教室から一歩踏み出した瞬間、後ろから声をかけられたような気がして振り返る。
その時、自分が伊達眼鏡をせずにいたことにやっと気づいた。
新入生代表挨拶でもメガネはかけなかったし、その状態であんな大勢の人の前で挨拶をしたから、少しは度胸もついたのかな?
なんてことを考えている間に、私たちに声をかけてきた本人が駆け寄ってきた。
「っ!?」
でも、どんなに度胸がついたとしても……たぶん。
「ねえ、ちょっといいかな!?」
「つ、月形くん……」
この人の前では、やっぱり堂々とできるわけなんて、なかったみたいで。
だいぶ慌てていたのだろう、少々息を切らした様子の月形くんが目の前に来ていた。
「えっと風晴さん……一花ちゃん?」
「っ!!」
初めて下の名前で呼ばれて、体が一瞬でガチッと硬直する。



