あまりの恥ずかしさに、じわっと涙が滲んできたのに気づいた雪くんが、ふっと笑って私の手を離してくれた。
「……ちょっといじめすぎた?」
「うん……」
頬に空気を溜めて、拗ねるようにうなずいてやる。
まさか自分が、年下にこんな扱いをされる日が来るなんて思わなかったよ……。
……いや、それ以前にクリスマスにこんなところで男の人と二人きりっていうこの状況が、ちょっと前の私からは考えられないことなんだけども。
「……それで、一花が俺に伝えたいこと、今日聞かせてくれるんだよね?」
「………」
雪くんのその言葉で、思考が一瞬で停止する。
そうだ、そのために今日ここに来てもらったんだった……。
「……あ、の」
「ねえ一花、もしかしなくてもこんなところで話すつもり?」
「え」
左の唇の上に、幼稚で意地の悪いしわをちょっと刻む雪くん。
周りには、カップルや友達などの人で溢れかえっている。
こんな人混みの中で、自分の気持ちを落ち着いて話せるわけがなかった。



