「………」 帰ろうかと、歩を進めようとしても体が動こうとしなくて。 はあ、ここまで弱い男だったとは…なんて自分にがっかりする。 そこでやっと、いつの間にか音もなく雪が吸いとられるように次々と土に消えていっているのに気づいた。 その雪は、なぜか自分の周りには降っていなくて。 不思議に思ってやっと顔を上げたとき。 「……っ」 傘を、差してくれていた人がいた。