顔を上げると、少し切なそうに唇を噛む秋くんの顔が視界に入ってきた。
「私、秋くんの彼女になれてとても嬉しかった」
ずっとずっと憧れで、話してみたら本当にいい人で。
そんなあなたにやっと、私の全部を知ってもらえた気がするから。
「まだ、言ってなかったなって思って」
「なにを……?」
不思議そうに首を傾げる秋くんに、私は精一杯の笑顔で伝えた。
「本当に、ありがとうございました」
「一花ちゃん……」
秋くんは小さく息を吐いてから微笑んだ。
私の気持ちの何もかもを理解してくれたような…そんな微笑みだった。
「こちらこそ、ありがとうございました」
その言葉を聞いて、お互いにぺこりと頭を下げて。
そしてまた目が合ったとき、二人で笑った。
「……雪、待ってるんじゃない?」
うん、と私はうなずいた。
雪くんが待ってる。



