桃子が俺と木下の仲を疑っていた?

「ありえないだろ、そんなの」

「天と地がひっくり返ってもないわよね。私たちが深い仲だなんて」

「いや、それもだが、桃子が不安がってたって」

「それは桃子さんに直接聞いてみたらどうかしら」

いったいどうして桃子が不安になるんだ。医学以上にわけがわからず混乱する。思えば勉強しかしてきていないのだ、こんな経験あるはずがない。

「ふふ、海堂くんにも苦手分野があるのね」

からかうように笑われ、なんだか悔しい気持ちになる。

「じゃあそろそろ仕事に戻るわ」

気が済んだのか、病室を出ていく木下を見送り桃子を見つめる。

愛しくて尊い寝顔。最初は桃子の気持ちが俺に向かなくてもいいと思っていた。一緒にいるようになってから、さらに気持ちは膨れ上がる一方で留まることを知らない。

近くにあったパイプ椅子に座り、柵の隙間から掛布団に手を入れ桃子の指先を絡めとった。