ここで受け入れるのが普通なんだよね。でも、私にはできない。自分の気持ちも、海堂先生の気持ちもよくわからないから。
それに、恥ずかしいけれど私は処女なのだ。こんな年齢になってまで大事に取っておいたとは言わないけれど、簡単に捨ててしまうのもちがう気がする。
初めては心から好きになった人とがいい。それって痛い女の考えなのかな。
こんなときどうするのが正解なの?
「桃子」
なぜだかドキッとした。
「なんでしょうか?」
「電気消す派?」
なんだ、そんなことか。
「はい、真っ暗派です。海堂先生は?」
「俺も真っ暗派。じゃあ消すから」
「お願いします」
電気が消えて静寂に包まれた。落ち着こうとするけれど、内心はドキドキ。早く寝てしまおう。それがいい。
「桃子」
「きゃっ」
急に気配がしたかと思うと腰を引かれて抱きしめられた。
「か、海堂先生っ」
「安心しろ、これ以上はなにもしない」
背中に感じる男らしい気配に、意識が全部持っていかれる。耳元に感じる吐息に、ゴツゴツとした腕や胸板の温もり。
不慣れな私はどうしていいのかわからなくて固まってしまう。
ダメ、やめて。また胸がざわつく。
「抱きしめるのもダメなのか」
「そ、れは」
「桃子に触れながら眠りたいんだ」
耳元でそんな寂しそうな声を出さないでほしい。私が悪いみたいで、ふつふつと罪悪感がこみ上げてくる。



