いわゆる交際〇日婚。自分がまさかそんな結婚をするなんて夢にも思わなかった。果たしてうまくいくだろうか。

だってまだ私たちはお互いをほとんど知らない。仕事上だけの関係だから。

「なんだ? そんなに見つめて」

「え、あ、いや。なんでもありません」

立っていた彼が私の隣に腰を下ろした。ソファが沈んで、それだけでなんだか緊張する。

やだ、私ったら。なにを意識してるのよ。海堂先生にとってこの結婚は、親を安心させるためだけのもの。形式上だけで、気持ちなんてないのよ。だから意識してはダメ。手が伸びてきて、後頭部を優しく撫でられる。その熱っぽい瞳は反則だ。勘違いしてしまいそうになる。

大事にされているんじゃないかって。

「今夜は覚悟しておけよ」

なにも言えずにうつむく。

「たっぷり愛してやるからな」

耳元で囁かれそこから熱が伝わってきた。背筋がゾクゾクしたのは気のせいで、この人は私の反応を見て楽しんでいるだけ。

「そのことについてなんですが、やはり、まだその……早いのでは?」

「なんだって?」

「で、ですから、早いのではと。二カ月前までは他人に近かったわけですし」

言葉を発するたびに、向けられる視線が尖ってきているようだった。