痛いところをつかれて声が小さくなる。そう、私はまったくと言っていいほど男性に免疫がない。高校時代に付き合った彼はいたけれど、それはそれは絵に描いたような清い交際だった。

お互い大学に入って忙しくなり、徐々に連絡が途絶え気づくと自然消滅していた。そこまで悲しくなかったのは、新しい生活がとても充実していたから。それ以来告白されないわけではなかったけれど、恋人を作る気になれず、結果この年齢まで男性経験なし。私は正真正銘の処女だ。

「そのへんも大丈夫だ、優しく手ほどきしてやる」

「なっ……」

海堂先生は私の反応で察したのか、余裕たっぷりに口角を上げた。それだけでなぜかドキッとして、この人になら手ほどきされたいなんて、そんな考えが頭に浮かぶ。

いやいや、ないわ。頭をブンブン左右に振って浮かんだ考えを打ち消した。

「とにかく考えるまでもなく、俺にしておくといい。俺は桃子以外はありえないからな」

この人の言葉は胸にスッと馴染む。本気でそう思っているかは別として、心の奥底の深い部分を激しく揺さぶられた。

「全力で幸せにすると誓う」

甘いセリフに思考回路が乱され、きっとこのときの私は正常な判断ができなくなっていた。

「わかり、ました」

ここからがすべての始まり。

後悔しても遅い。

引けないところまできてしまった。