「強引、ね。引きたくない相手には、誰だってそうなるだろ。じゃなきゃ医者なんかやってない」

たしかにそうかもしれないと妙に納得した。でも、それとこれとは話が別だ。スケールが違いすぎるもの。

「将来をそんなに簡単に決めてしまっていいんですか?」

「今朝、腕をぷるぷるさせながら心臓マッサージしてる必死な桃子を見てたら、なんだかふと一緒にいたら楽しそうな気がしたんだ」

思い出しながらフッと笑う海堂先生。

「た、単純すぎる……」

「なにか言ったか?」

言葉にトゲのようなものを感じた。きっと聞こえていたんだろう。鋭い視線を向けられる。

「別に……なにも言っていません」

それにしても今朝の私の姿を見て『一緒にいたら楽しそう』だなんて、どういう思考をしているの。

「安心しろ、結婚したらちゃんと夫婦としての義務は果たすから」

「義務……?」

「毎晩ベッドの中で愛を囁いてやる、嫌というほどな」

「なっ!」

なにを言うんだ、この人は。

ニヤッと笑った顔にはたっぷりの色気が含まれていて、からかわれているとわかってるのに心臓が早鐘を打った。

「真っ赤になって、ウブだな。まさか、経験がないとか?」

「そ、そんなわけ……ないじゃないですか」