「婚姻届だ」

実際に見るのは、当然だけど初めてだ。まさかさっきこれを取りに行っていたなんて思いもしなかった。

私たちは見せかけだけの夫婦でこれからが本当の始まり。

「さすがに入籍は桃子の気持ちが固まってからにしようと思ってた。まだ出さないつもりだったが、もう大丈夫だな」

「新さんは本当に私でいいんですか?」

「なにも問題はない」

言い切れるところがすごい。こんな私でいいのかと私が不安になる。

「桃子は俺じゃ嫌か?」

「……がいいです」

「ん? 聞こえなかった」

「私も、新さんがいいです」

まだよく知らない部分もあるけれど、繋がったこの気持ちをこれからも大切にしていきたい。

きっと、新さんとならそれも叶うのではないか。そんな気にさせられる。

「今すぐ部屋に帰って記入しよう。そして一刻も早く本物の夫婦になるんだ」

「そんなに焦らなくても、私は逃げたりしませんよ」

クスクス笑ってみせると、彼はうっと声を詰まらせた。

「ちゃんと好きですから」

私から手を取り、ギュッと包みこむ。繋がった手から、想いが全部伝わるとどんなにいいだろう。

「今夜は離さないから、覚悟しておけよ」

凄まじいほどの色気を含んだその声に翻弄される。

でもね、大好きなあなたとなら、それも悪くないかもしれない。

この一瞬で気持ちが大きく膨らんで、もう新さんしか見えない。

「一生離さないからな」

「ふふ、はい」

甘い蜜をたっぷり含んだ独占欲に胸が疼いた。