退院の日、新さんはたまたま休みだったらしく迎えにきた。部屋を出てナースステーションに立ち寄ると、スタッフたちからの痛いほどの視線が突き刺さった。
入院中あからさまに噂されている様子はなかったけれど、私たちが一緒にいるところを見てざわざわと騒がしくなる。
「やっぱりふたりは付き合っているの?」
「海堂先生って、清楚系のお嬢様がタイプだったのね」
「それにしても羨ましいわ」
コソコソしているつもりだろうが、聞こえています、はっきりと。できるだけ穏便にやりすごそうと、愛想笑いを浮かべて会釈する。彼女たちは師長にたしなめられ、借りてきた猫のように大人しくなった。
「雪名さん、お大事にしてください」
「ありがとうございます、お世話になりました」
「師長、妻がお世話になりました」
そのセリフにギョッとして隣の新さんに振り向く。
しれっとした余裕のある表情を浮かべて、私などお構いなしだ。
いったい、なにを考えているというの。
「あらあら、まぁ! そうなの? もうそういう仲なのね」
「ええ、まぁ。内密に式は済ませました」
「あらー、いいわね。幸せね」
周りのスタッフたちが悲鳴にも似た声をあげる。



