「どうしてそんなにうれしそうなんですか」
「そりゃうれしいわよ。部下の雪名さんが海堂先生を射止めたなんて、上司として鼻が高いもの。これで見返してやれるわ」
「誰をですか」
「いろいろよ、いろいろ! いいわね、海堂先生。次期院長だもの、玉の輿よ。セレブな生活に憧れるわ」
鼻高々に語る清山さんに苦笑する。あっけらかんと明るく笑い飛ばしてくれる清山さんだからこそ、今は安心できるけれど、噂はたいてい尾ひれがついて回るというし、ロクでもないことを言われてなきゃいいな。
少々不安は残りながらも、いつかは通らなければならない道だと思うようにした。
「それで結婚式はいつ挙げるの? もちろんお祝いしにいくからね」
「あ、いや、それはまた改めてお知らせしますね」
もう済んでますとは言えず曖昧に交した。落ち着いたら結婚披露パーティーを開催する予定なのだが、詳しいことはまだわからない。
新さんがどういう気持ちでいるのかも、さっぱりだ。このままでいいはずがないのはわかっている。だからきちんと話さなきゃ。
「あなたたち、とてもお似合いよ。木下先生よりももっとずっとね」
「清山さん……」
「今度詳しい馴れ初め聞かせてね。じゃあそろそろいくわ」
清山さんは颯爽と手を振り、軽い足取りででていった。
夕方になり、新さんがきてくれるであろう時間までそわそわしながら待つ。すると短いノックのあとにドアがスッと開いて、薄手のジャケットを羽織った新さんが顔を覗かせる。



