私を心配し、優しい言葉をかけてくれる進。やっぱり私の味方をしてくれるのね、頼もしい存在だわ。

そのときちょうど部屋のドアがノックされて誰かが入ってきた。

「あ、海堂さん。こんばんは」

「どうも」

仕事途中なのかはわからないが、新さんは首に聴診器をかけ、院内用のスマホをスクラブの胸ポケットに入れた仕事モードの格好だ。

進に対してほんのわずかだけ厳しい視線を向けたように見えたものの、そのあと普通に返したので特別な意味はないのだろう。

タイプのちがった整った容姿のふたりが並ぶと、それはそれはものすごく絵になる。

「起き上がって平気なのか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか」

ホッとゆるんだ口元を見て胸が熱くなった。

「では、俺はそろそろ失礼しますね」

「ありがとう、進。またきてね」

「ああ、じゃあな」

にこやかに笑いながら部屋を出ていこうとする進に手を振る。進は新さんにペコリと一礼した。

「妻はもう大丈夫なので、ご心配には及びません」

進が部屋を出る直前に新さんの低い声が響き、私はとっさに彼の横顔を見上げる。

気のせいかもしれないけれど、なんとなくトゲのある口調。あからさまに不機嫌そうに歪む口元。

それにしても、妻だなんて。呼ばれ慣れていないから変な感じがする。

わけがわからず目を瞬かせていると、振り返った進が意味深に小さく笑った。

「わかりました、桃子は海堂さんにおまかせします」

「そうしてくれ」

その言葉を最後に進は部屋を出ていった。