二人はお酒を一口、二口味わった。
「あの……ユキはレンタル彼氏の仕事を続けているんでしょうか?」
初音は恐る恐る尋ねる。
正直、返事を聞くのが怖い。
しかし、どんなに怖くてもこれを尋ねないわけにはいかなかった。
そのために、もうやらないと決めていたレンタル彼氏を再び依頼したのだから。
「辞めたよ」
遼はハッキリとそう告げて続ける。
「君のことを聞いて間もなく……一身上の都合とだけ告げて。今は多分、他のバイトを色々掛け持ちしてるんじゃないかな。
彼、学生だから大学にも行かないとだし、お母さんの治療費とかけっこう大変だって――…」
言葉の途中で遼が自らの口を押さえて発言を終わらせた。
人の事をペラペラと話すのは、レンタル彼氏としてのマナー違反だと気付いたからだ。
「辞めちゃったんだ……」
初音は突きつけられた事実だけをポロッと零した。
“レンタル彼氏を辞めて欲しい”
そう求めたのは紛れもなく初音自身。
あの日に戻って、このやりとりを無かったことにしてしまいたい。
初音は今更ながら深い後悔に苛まれてしまった。



