薄暗い階段をおりた先でそのバーは営まれている。
まったりとしたテンポのジャズが小音で流れ、場の雰囲気をつくっていた。
二人はカウンター席に横並びになって座り、遼が「この子に心の落ち着くお酒を……。僕はいつもので」と注文する。
カウンター越しでマスターが「かしこまりました」と承った。
しばらくすると、グラスに入った淡い黄色のギムレットとおしゃれなマグカップに注がれた白っぽい飲み物が目の前に出される。
温かい白いお酒は初音も見たことが無く、ポカンとそれを眺めていた。
「ブランデーエッグノッグでございます。洋風のたまご酒で心が落ち着きますよ」
若いマスターは人当たりの良い笑みを浮かべて言った。
甘くていい香り。
初音はそれを一口飲んだ。
「ねぇ、今夜は僕が君の彼氏だから“ハツ”って呼ばせてもらってもいいかな?」
遼は優しく尋ねた。
その問いに対して初音は「はい」と答えて頷いた。
「じゃあ、改めて……僕は遼。今夜はよろしく」
そう言って握手を求められ、初音は彼と握手を交わすことでそれに答えたのだった。



