持ってきたお冷をチビチビ飲んで、そんな自分自身の情けなさに時折ため息をついた。
“大学に居るのであれば必ずここを通る”なんて情報を持っているのならば待っている甲斐もあるが、今は本当にたんなる待ちぼうけ。
どうせ、この後に予定があるわけではない。

タイムリミットは学食が閉店する午後六時。

彼に会えなくて当たり前。
会うことができればラッキーくらいの考えで居ようと決めた時、学食の入り口から「初音さん?」と聞き慣れた声が名前を呼んだ。
初音が握りしめていたスマホから顔を上げると、そこには雪次郎と女の子が一人立っていた。

女の子は雪次郎と同じ年頃で、今時の子らしいおしゃれなメイクと服装をしている。
両耳でユラユラ揺れている小さくて真っ赤なハートのピアスと短めの前髪、ゆるっと両サイドに編み込まれた三つ編みが印象的だった。

「初音さんがどうしてこんなところにいるの?」
「どうしてって……」

雪次郎が投げかけた問いに、初音は答えるのを躊躇(ためら)う。