美久は俯いた。
きっと、貶されているのだと、また、『汚い』とか、言われているのだと、そう思った。


「吉田ー」

男子が、彼を呼んだ。
美久がこっそりと想っている人の名前だった。

手招きして、教室の角で、何かをボソボソと呟いている。
吉田は、笑いもしないし、無表情のままだ。

―何を思っているのだろう。

怖くなった。

今、教室に美久がいるからなのか。
もし、此処からいなくなったら、あの男子共と同じことを言って、嘲笑うのか。

怖くて、教室から出られなかった。