「あいつさぁ……」

こそこそと、でも、何となく、聞こえるくらいの声で、言われている言葉。

『汚い』とか、『気持ち悪い』とか。

聞こえているけれど、聞こえなかったフリをする。

惨めになるから。


教室の、掃除中。
後ろに下げておいた机を、運んでいた。
取り残された、美久の机。

「さっさと前に持ってってよ」

リーダー気取りの女子が、そう注意した。

男子の一人は、しぶしぶ、それを運ぶ。
すぐに手を離して、仲間を呼ぶ。