「嘘ばっか。知ってるよ。この前、西岡さんと歩いてたって。聞いた」

今日一番の、深いため息をついた。
携帯を、放り投げた。

誰でもいい。
なんでもいい。

ただ、西岡春香が、金持ちだっただけだ。
それに、相手はあからさまな好意をこちらに抱いている。

哀れな女だ。
好きでもなんでもないのに。

ちょっと優しい言葉をかければ、慣れていないように、少し、恥ずかしがる。

『今日も一日、ありがとう』

そう言って、三万円くらい、包んで渡してくる。
割のいいバイト先だ。