でも、谷川も同じなのかもしれない。

あの人は、お金が欲しかったのだろう。
会社が倒産して、父親が無職になってしまったのを、知っている。

枕元にあった、携帯。
割れても修理に出すことも、新しく買い換えることも出来ない。

着信履歴には、確かに『鈴木愛衣』の名があった。

―まだ、好きなのかしら。

谷川が鈴木愛衣に告白したのを知っている。
そして、実際、しばらく付き合っていた。

それなのに、「何すればいいの?」と戯言を言って、別れ話を切り出したのは、鈴木愛衣の方だと、誰かから聞いた。

―やっと、欲しいものが手に入った。