ところが、その会社が倒産しかけ、高級取りだった父を解雇した。いわゆる、リストラだ。

それにショックを受けたのか、家に引きこもり、たまに部屋を出たと思ったら、パチンコ屋に出かけるだけだ。

貯金を切り崩して生活する日々。
とても、私立の高校なんて、通っている場合ではなかった。

「母さん」

返事はない。

テーブルに、昨夜、春香の財布から抜き取った五万円を置いておいた。


財布に入っていた五万円。
きっと、谷川が持っていったのだろう。
春香はそう思った。

有名私立に通っていたはずの谷川は、レベルの低い、公立の制服を着ていた。