「俺さぁ……」

その後の台詞は、覚えていない。

真っ暗な部屋。
冷えたベッド。
中身の無くなった財布。

西岡春香はため息をついた。
そう、これが、現実なんだ。と。

谷川がここを訪れたのは、決して、自分と寄りを戻すためではない。
そんなもの、無かったのだから。

もう一度、やり直せる。
今度は、この人の、一番になりたかった。

恋を、してみたかった。

『また。週末に』

彼はただ、そう言って、去っていった。