「お姉ちゃん、これ、ちょうだいよ」

テーブルの向かい側に座っていた妹、長岡美久が、由美の持っていたシャーペンをつつく。

「可愛いね、これ」

にやりと笑った。

またか、と由美はため息をついた。

「いいわよ、持って来なさいよ」

「いえぃ」

美久はシャーペンをくるりと回し、遊んでいる。

「てか、あんた、勉強しなくていいの?もうすぐ、テストじゃなかったっけ」

「知りませーん」

美久はケラケラと笑いながら、席から離れる。

「内申、取っときなさいよ」

「あたしみたいに、受験落ちないように―?」

「馬鹿。取れるんなら取っときなさい、って言ってんの。言っとくけど、二人共私立とか、本当にお金かかるんだからね。キツいんだからね。」

はぁい、とやる気の無い返事をして、彼女は部屋に戻る。