「そういう問題じゃない。どうして来たのよ」

 谷川は、一度黙った。

「明日、放課後、また」

そう言うと、声はしなくなった。

春香はカーテンを開ける。
そこには、誰もいなかった。

(何を、今更……)

硝子の向こうには、影さえも無い。
あるはずの無い余韻を確かめたいのか、否か。

春香はずっと、外を眺めていた。
 

男と女が、いた。
女は、男に、封筒に入れた金を渡していた。

『ありがとう、アイシテル』

それが、偽りだと知りながら。