「こんな夜遅くにどうしたのよ。西岡さん、夜歩きするような奴だっけ」

「違うわよ」

夜歩きなんて、したことはない。

危ないから、と門限はいつも七時で、冬には六時だった。
これでは、人と遊ぶことも出来なかった。

「んじゃ、家出?」

「そう思ってくれて結構」

家出。
本当は、何だか、その言葉の響きが、不快だった。
あの家は、自分の意思で借りた物で、決して、他人の物ではないのに。

「寒くないの?」

「寒いよ。コートも何も、着てない」