「俺も名取と同意見でさ、宏臣に言ったんだよ。ここって近くに店もないし、駐車場も別に探さないといけないし、夜は道も暗い。いきなりこんな利便性の低い物件提示されたらどんな女も引くだろって」

「潮崎はリアリストすぎる。住めば都なんだって」

 住めば都って、世の中で最初に言い出した人に苦情を言いたくなった。埒が明かない。
 このまま議論を重ねても、一度こうと決めた宏臣は折れることなく、自分は正しいと言い張るのだろう。
 私としては、正しかろうが間違っていようがどうでもよくなってきた。
 酔っているとはいえ、さっきの私を見下す発言が、かなり控えめに言っても気分が悪い。


 トイレを借りて戻ると、部屋から潮崎くんの姿が消えていた。

「潮崎なら飲み物買ってくるって出てった」

「えっ」

「リクエストあるなら連絡すれば?」

 と宏臣はスマホをかざすけど、飲み物なんてどうでもいい。
 急にふたりきりにされて戸惑っているのだ。