駐車場まで無言だった。
 ショーウインドウばかりか、このあたりでは普通の住宅でもクリスマスイルミネーションが設えてある。
 玄関先に電飾の灯るツリーがあったり、雪だるまや天使の置物があったりする。
 見上げればベランダの手すり伝いにサンタクロースの飾りが光っている。
 どこかから花の匂いがする。冬の庭先にこんな香りの花って咲いたっけ、と思って振り向いたら視界いっぱいに花が飛び込んできた。

「えっ? えっ? なに?」

「プレゼント」

 岸さんに花束を押しつけられていた。
 いろんな花がたくさん入った大きな花束だった。
 手の中で淡い色が揺れる。

「私、プロポーズでもされるんですか?」

「まさか」

 動揺のあまり、素っ頓狂なことを言い出す私。
 岸さんの声色はいつもと変わらなかった。

「なにかあげたいと思ったから」

「いつの間に」

 ありがとうございます、とかろうじて言った。

 岸さんは静かに私を見つめている。ん? と岸さんは小さく首を傾げた。
 私はもう一度花に目を落とした。やっぱりいい匂いがする。
 なんて言ったらいいかわからない。
 胸がいっぱいで、どうしようもなく苦しい。
 たまらず私は岸さんの胸に飛び込んだ。花束ごと背中に手をまわす。

 バイクに乗せてもらうときに背中に抱きついたことはあるけど、正面からいくのは初めてだ。自分からやったくせに心臓が爆発しそうになっている。

 岸さんの手が私の頭に触れ、髪を撫でた。