岸さんというのは、手掛けたデザインの指示がいちいち細かいと、描く側からは煙たがられている人だった。 というと聞こえが悪いかもしれない。 要求が多いぶん、作り込まれた仕上がりになっていて、ああ岸さんの柄かとすぐにわかるのだ。 おじさんが幅を利かせている意匠部のなかでははっきりと若いほうだ。 部署内での年齢的立ち位置は私と似たようなものだけれど、会社への貢献度はまるで違っている。 岸さんのデザインは受注が多くつく。 営業部に重宝される、いわば売れっ子デザイナーなのだった。