「……お人好し」

「私のことですか?」

 岸さんの甥っ子のユイトくんと少しだけ遊んだあと、私と岸さんはサンタ業務の慰労会をすべく、レストランで食事をした。
 サンタクロースのコスチュームも着替えている。
 私はサンタのままでもよかったのだけど、岸さんにその格好じゃあどこにも連れていかないと断固拒否されて、仕方なく。

「でもまあ、よかったよ。ユイトも喜んでいた」

「あんなかわいい子に縋られちゃ拒めませんって! あと、名前も似てたんで」

「ああ、ユイトと結衣。……どうした?」

 どうもこうもない。
 突然岸さんに下の名前を呼ばれて、照れくさかっただけだ。
 だけど不思議と心地よさもあって、そのままふわふわと漂っていたくて……。

「岸さんさえよければ、私のこと、名前で呼んでもいいですよ?」

 なんて言ってみたものの、言ったそばから恥ずかしくなってきて、残っていた飲み物をぐいっと飲み干した。

「ちょっと言ってみただけです」

 出ましょう、と促した。
 居たたまれないとはこういうこと。
 店の外の風に当たっているうちにどんどん冷静になっていった。
 岸さんが気にしていないといい。