「岸さんは、困っていないですか」

『なんのこと』

「なんだか元気ない気がして。私の勘違いかもしれないですけど」

『勘違いじゃないよ』

 間髪入れずに岸さんは言った。

『聞いてくれる? 噂を真に受けて変なメッセージ送ってきた子がいたんだ』

「あ……はい」
『その子が不愉快な思いをしていないかと、こっちは気が気でなかったのに、連絡はつかないわ、片想いしていた男と会ってるわで、さ』

「あー。ですね」

『やっと電話が通じたと思ったら、俺の相手をする元気はないだの会いたくないだの言ってさ。そんなこと言いつつ、俺としゃべっているうちに勝手に元気になってるの。どう思う? これ』

「そういう相手はぎゃふんと言わせてやればいいんですよ」

『……いいんだ? 懲らしめても』

 確認するような間があった。