予想は外れた。
 図面ではなく、出張先での個人的なお土産だった。


「バラとラベンダーとカモミール……」

「選べなかったから三つとも買ったんだ」

「他のはともかく、バラの入浴剤を父も入る我が家のお風呂に使うの、わりと笑えます」

「入浴剤?」

 えっ、となにやら驚いた岸さんは私の手元に顔を寄せ、お土産の包みをじっと見た。

「紅茶じゃなかったのか」

「今気づいたんですか」


 なんでもそつなくこなしてドジを踏むこともなさそうな岸さんがこんなうっかりをするのか、とびっくりするやらおもしろいやらで笑いを堪えていると、
「なんなら俺んちで入る?」
 そんなことをさらりと言われた。
 笑いが引っ込む。真顔で岸さんを見た。

「冗談だよ」
「入りたい。です」

 即座に私は言った。反射だった。私ばかり感情をかき乱されてるのも癪だなって思って。
 岸さんにも私の言動で焦ったり慌てたりしてほしかった。