高速道路に入り、サービスエリアで道の駅をのぞいてから早めのランチを取る。
 目的地の美術館に着くまえに食べておいたほうがよさそう、とふたりの意見が一致した形だ。

「渋滞していなければあと二十分くらいで着くと思う」

 そう言えば、車にカーナビはついているけれど案内は静かなままだ。

「ナビなしで走れるんですか」
「美術館なら。それに普段はバイクだから」
「そっか。そうですよね」

 しゃべっているうちに美術館に到着した。



 館内は混雑しているという。確かに人は多かった。
 目玉となる現代美術の企画展示がSNSで話題だから、この人の入りは最初から想像できた。
 お互いのペースで観ながらも、次行く? と小声で聞きあって、はぐれないようにそばにいた。

 岸さんが図録を買いにいっている間、私もふらりとショップを物色する。
 企画展限定のラムネ菓子とポーチを買い、岸さんにプレゼントした。

「なに入れるの、これ」

 コーヒーショップでの休憩中、岸さんは早速、私からもらった包みの中身を開けている。

「女の子が持ち歩いているのは見るけど」

「なんでもいいんですよ。絆創膏とかソーイングセットとか」

「それ女子だろ」

「思いこみから新しい発想は生まれませんから。あ、なんか岸さんがどう使ってくれるか楽しみになってきた」