言われることひとつひとつがもっともだった。
『なんとなく冷たい』と評されていたのが見えた気がした。
 そこに慰めがないんだ。だから暖かみを感じないのだろう。

 私の所属は女の人が大半の職場だから、大変だよねとまずは労いや心配の言葉から入る。同情や同調をしてくれる。
 そんな日常からしたら、岸さんの態度はどうしたって冷たく異質に映る。
 男の人の職場は案外そんなものなのかも……と思っていると、
「仕事をやりとげたらご褒美をやるよ」
 なんとなく冷たい人なら言いそうにない一言を言われた。

「ご、ご褒美」

「ああ」

「なんだろう」

 思いがけない言葉をもらい、ぐるぐるしていた思考が止まる。違う方向に傾いて動きだす。


 甘いものかな。ご飯かな。それともどこかに連れてってくれるとか?
 自分の顔が緩んでいるのがわかる。
 岸さんはそう言ってくれたけど、そもそも岸さんからご褒美をもらう筋合いでもないのだから期待しすぎるのはいけない。


 いけないのだけど……終わりが見えなくて、気の滅入ることばかり考えてた頭に風穴を開けてくれたのは確かで、その厚意は受けとろうと思った。