もらった名刺の連絡先に電話をすると、猫山さんはタクシーで迎えにきてくれた。店を予約してあるという。
知らない人との食事は不安もあるけど、相手は都市部の人だ。
土地勘だったら私のほうがあるんだし、用が済んだら帰ればいいと思っていた。
他のメンバーはあとから来るという話だった。
なのに料理が出てきても誰も来ない。
「いつもこうだから先にはじめよう」
「はあ」
猫山さんが乾杯とグラスをかかげ、しかたなく私も合わせた。
途中、猫山さんのスマホにメッセージが届いたみたい。
「機材トラブルの対応で今日は来れないって。参ったなー。……ああ、誘ったのこっちだから気にせず飲んでよ。おごるし、なんならタクシーも手配するし」
「でも」
「君がいてくれてよかった。俺、ひとり飲みになるとこだったもんなあ」
そんなふうに言われたら、そうか私がいてよかったのか、と思う。
次なに頼む、と聞かれて、飲み物を注文してしまう。

