撮影は当初の予定より長くなった。
取材スタッフさんたちが私を見るなりどよめいた。
マジでさっきの子か? とか、いいじゃん、とか、急に見違えたな、とか丸聞こえだった。
先輩たちが上げてくれた女子力の賜なんだけど、それはよかったんだけど……こうも顔ばかりをじろじろ見られるとなんとも落ち着かない。
描いている私の手元だけを撮るはずが、テレビ局側が説明のシーンまで撮りたいと言いだした。
知らない人に囲まれて、照明を当てられて注目されて、撮影が終わるころには私は疲れ切っていた。
嵐のような三十分だった。
片づけを終えて次の準備をしていると、取材スタッフに名刺を渡された。
この人は猫山さんというらしい。見た目は40才には届かないくらい。
「このあと時間作れる? 失礼なことを言ったお詫びをさせてくれないかな」
「……仕事中ですので」
「夜だよ。えーと、慰労会? 堅苦しいやつじゃないからさ。あ、でもこれ内緒ね? 人数増えると経費で落ちないから」
行くなんて一言も言っていないのに、あとで連絡くれと言い残して去っていく。
このまえ岸さんが小料理屋に連れていってくれたのと同じようなものだろうか。接待みたいな?

