「迎えにきてくれるとは思わなかったです。あーびっくりした。まだ動悸が収まらない……」

「送ってもらった動画見たら、体が動いた」

「心配したとか?」

「いろいろと」

 車に乗りこむと、岸さんが私をまじまじと眺めた。

「案の定だった。油断も隙もない」

「なんのこと」

「気づいてないならそれでいい」

「知りたい。真相プリーズ!」

 そのまま車を発進させるかと思ったら、私のフレーズが受けたのか、思いとどまり向き直ってくれた。

「綺麗に着飾った名取さんに、結婚式の雰囲気にあてられて近づく輩がいるんじゃないかと思って」

「そんな輩がいたら潰そうって? 岸さんて、割と小物」

「……なんとでも言え」

 言って岸さんは頬にキスをくれる。人に見られたらどうするの、と私のほうがヒヤヒヤする。見える範囲の駐車場には誰もいなかった。

「そもそも、あの男の結婚式でそこまで綺麗になることないのに」

 褒めているとも態度を貶しているともとれる発言を、私は黙って聞いた。反論する気は起こらない。