週末の三連休は別々に過ごした。岸さんが泊まりがけの出張だったからだ。
 律儀に今度もおみやげをくれた。今度こそ紅茶のティーバッグだった。
 岸さんの家には紅茶がなかったから持っていけばいいと思ったし、そのときにはおいしいお菓子でも用意しておきたい、そういえば来月はバレンタインだ、などと取り留めのないことを考えていた。


 週末に泊まりにいったり、平日はたまに一緒に夕飯を食べて帰ったりと、ごく普通のおつきあいをしていた。
 繁忙期もあったけれど、過ぎてしまえばいつもの日々と変わらなかった。お疲れさまと労って、それを口実にして会う時間を、端的にいえばいちゃいちゃする時間を作った。


 だから、岸さんが会社を辞めるという話は突然のことで、ものすごく驚いた。
 せめてもの救いは、岸さん本人の口から直接聞けたことだった。