元旦の翌日の午後、岸さんがバイクで迎えにきた。
 天気は快晴。隣町の神社へ初詣に行った。
 駐車場はいっぱいで露店も出ている。
 人の群れに一緒に流れて進み、お詣りを済ませた。

 岸さんが立ち止まった。

「どうする。声かける?」


 視線を追うと、宏臣がいた。背が高いので人混みの向こうでもわかりやすかった。
 いらないです、と即答し、岸さんもなにも言わずにそのまま行こうとしたのだけれど、宏臣のほうがこちらに気づいた。

 こうなると無視もしづらい。通行の邪魔にならない低い木立のところで顔を合わせた。

「結衣も来てたのか。言ってくれたら皆で来られたのに」

 言いながら、宏臣の目が私から横に流れる。岸さんを見ている。

「彼氏といるのにそんなことしません」

「かれし」

「恋人って意味」

「そりゃわかる。けど……」

 呆けた顔しかできない宏臣に岸さんがそつなく挨拶をした。着物を買ってくれたとか、私と同じ会社とか、そういうことは言わなかった。
 聞いているのかいないのか、宏臣はまだアホみたいに口を半開きにして岸さんを見ている。

「なんなの。一目惚れでもした?」

「んなわけねーよ。ただ……結衣にそういうやつがいたんだって、驚いただけ」

 お待たせ、と声が掛かり、宏臣の男友達らしき人たちがわらわらと集まってくる。
 私の知らない人ばかりだった。
 こちらから説明するほどでもないと思い、じゃあまたねと言ってその場を離れた。